こんにちは。瀬谷インターナショナルの土肥です。
SIFではここ数週間、選手達の試合での体力(ここでは様々な試合中のアクションを高い頻度でかつ長い時間繰り返せる能力を体力と定義します)を高めるためのトレーニング(コンディショニング)を実施しています。
試合での体力を高めるために各クラブ様々な取り組みを行なっていると思いますが、今回はSIFで取り組んでいるトレーニングの方法とトレーニング結果について書いていきたいと思います。
♦︎単純な走り込みに将来への蓄積はない。
試合で走りきる体力をつけるための単純な『走り込み』。試合での体力を高める方法として日本では昔から現在に至るまで様々なクラブで実施されてきました。確かに一定の効果はもたらしそうですが、育成年代ということを考えると問題があるように思えます。その問題とは将来への蓄積がほとんどないことです。子供の頃たくさん走ったからといって大人になるまでずっと体力のある選手ということはあり得ません。走力とは常に変動するコンディションであって、長年蓄積できる財産ではありません。持って数ヶ月でしょう。
プロ選手であればコンディションを高めることに多くの時間を費やしてもいいと思いますが、育成年代においては蓄積のできる技術練習などに多くの時間を使うべきだと考えています(後に書きますがすばしりの全てを否定するわけではありません)。
しかし試合で走りきる走力は試合で勝つためには必須条件です。走れなければサッカーになりません。ではどのようなトレーニングで体力を向上させていけばいいのでしょうか。
♦︎大前提はサッカーの体力はサッカーで高める
育成年代の選手達に最も重要なことはボール技術を高めることです。試合での体力を高めようという試みの中にも常にサッカーが上手くなる要素を取り入れたいと考え、できる限りボールを使った練習でコンディショニングトレーニングを実施しています。内容としては4対4や6対6といった少人数でのシュートゲームです。
オランダのレイモンド氏推奨する4対4のトレーニング。試合に近いトレーニングでかつ強度も高い。良いものはそのまま導入しています。
実際に練習中の心拍数などを計測し、心拍数が180以上となることがわかりました。実際のサッカーの試合では150~170くらいの心拍数になるので、試合よりも運動強度が高いトレーニングとなります。
40km以上を走るマラソンランナーが1kmのような短い距離をレースペース以上のスピードで繰り返しトレーニングする練習に近い考え方の練習といえばわかりやすいかもしれません。
図は4対4のトレーニング中の心拍数。180以上の心拍数を記録する。
♦︎心拍数が全てではない。連続する1対1は対乳酸能力を向上させる。
サッカーの試合中の体力を考える上で心拍数だけでなく対乳酸能力も重要な要素だと考えました。陸上の中距離選手が自転車トレーニングのような乳酸トレーニングのみで記録の向上を達成できるということからサッカーにおいても対乳酸能力を高めることがアドバンテージになると考えました。
この対乳酸能力をサッカーのトレーニング向上させようとした時に思いついたのが1対1のトレーニングです。数人の選手が交代で数分間1対1を行います。4対4と異なる点は常に腰を落とした状態が続くので、脚により乳酸が蓄積することになり、対乳酸能力が高まるのではと考えています。
♦︎ボールトレーニングでは実現困難。ボールを使わない『すばしり』が最大心拍数を引き上げる。
SIFのコンディショニングトレーニングには3分程度の走りのトレーニング『すばしり』があります。
近年では『すばしり』を行なっている指導は『悪』といった情報をインターネット上の様々な場所で見るようになりました。冒頭で書いたように、私も『すばしり』ありきの指導には大反対です。
しかし『すばしり』には最大心拍数を叩き出せるという大きなメリットがあることがわかりました。
これまでサッカー選手の試合中の体力を向上させるため様々な検証を行って来ましたが、最大心拍数を超えてトレーニングできるのはある特殊な『すばしり』(サッカーの動きを取り入れた走り)のみでした。
逆に言えばボールを使ったトレーニングで最大心拍数を超えてトレーニングできる練習メニューを未だに構築できていないということです(どこかにはあるかもしれませんが)
私の見解ではボールトレーニングは常に判断や思考を伴うため、全力を出しきるという点でどうしても最大限の力を発揮できないのでと考えています。
最大心拍数を超えてトレーニングを継続していくと最大心拍数そのものが伸びていくことも検証ではわかりました。
SIFのある選手は1ヶ月間で最大心拍数が190→210に増加しました。このわずか3分足らずの走りのトレーニングは最大心拍数を向上させるのに重要なトレーニングと位置づけています。
♦︎トレーニング結果
トレーニング結果はVo2max(最大酸素摂取量)で示します。※試合中の走力は様々な要素が複合していて正確な評価が困難なため。
【トレーニング頻度】週2〜3回実施
【トレーニング期間】4週間
【Vo2max】46.0ml→49.9ml
【1500mで表すと】5分49秒→5分24秒
【20mシャトルランで表すと】89回→106回上
上記のにように4週間でVo2maxが大幅に上昇しました。
主観ではありますが(正確に測定できないので)試合中の走力、持久力も大きく向上したように思えます。
今後も選手たちの技術向上とフィットネス向上をのため、科学的な検証を繰り返しより効率的なトレーニングを作っていければと思っています。